中国ウォッチング『善隣』2004年12月号(上松玲子訳)


エンジニアは不人気

「中国は未来の製造大国。未来の中国は多くのエンジニアを必要とし ている。」清華大学で開かれた第三回国際工学教育大会で米国工学教育 協会(ASEE)は発展途上国での大会開催理由をこう説明した。 しかし一つの楽観できない現実がある。二十年前中国では工学系の学 生が全体の六割を占めていたが、今ではその比率は三分の一に減少。 1950、60年代には優秀な学生は競って工学部を目指したが、現代は 金融、銀行、ITなど有名、有利な職業に繋がる分野が選ばれる。ある 省の大学入試最高得点者が清華大学入学志望から、工学部は疲れて大変 だからと、一転して北京大学で最も流行の生命科学学院に入学したこと は典型的な例だ。 工学教育に問題があるのだろうか。近年、理工系有カ大学の多くが総 合大学化したのに伴い、従来の工学部優勢は徐々に失われた。大学内部 の業績評価で論文とSCI(世界の代表的な自然科学分野の3,750誌以上をカバー した引用文献索引)収録数を重視されるようになったため、教員たちもそこに 力点を置くようになり、実践が乏しくなった。さらには多くのドクターの招聘だ。 彼らは国内外で立派に博士課程を修め、秀でた研究論文を発表した。だが問題は 彼らにはほぽ百パーセント実践経験がないことだ。教師が実際のエンジニアリング ができなくては工学に強い学生を率いていけるはずがない。 北京航空航天大学の前校長、瀋士団教授はこう指摘する。計画経済下 では本科生の卒業設計の30%が企業や現場で行われ、工科の学生は卒業時には 二級エンジニアのレベルに達していた。しかし今日、国有企業はコストを下げるため に学生の実習を受け入れていない。 かつて茅以昇、李四光、銭学森らを代表とする国際的にも著名なエン ジニアを誇りとしていたのに、今では工学部の落ちぶれた様は紛れもな い事実だ。工学は国の発展の基盤であり、国家の実力の根本でもある。 清華大学副校長余寿文教授は「優秀な若者が二十世紀初頭のように喜ん でエンジニアになりたいと思えるような環境作りこそ、工程教育が真剣 に考えるべき課題だ」と語る。 (『北京青年報』2004年9月20日)


表舞台に出た富豪二世たち

巨額の財産を継承した富豪の二世「富二代」たちが、相継いで親の企業を引き継いで トップに着き、世間の注目を浴びている。李海倉の子、李兆会は海金グループの総裁となり、 魯冠球の子、魯鼎偉は万向集団の総経理になった。劉永好の娘劉暢は民生銀行と金鷹成長基金 の株主リストに名を連ね、左宗申の娘、左穎はST宗動(成都宗申熱動力機械公司)の筆頭株主となり、 中国最年少の億万長者となった。 中国にはどれほどの「富二代」がいるのだろう。メリルリンチの2004年の報告では中国大陸の 1000万元富豪は24万人という。中小の家族企業は更に多い。 今のところ中国には三代にわたる富豪はいない。「富二代」は莫大な財産は受継いだ が、富豪としての歴史は浅い。一代で富を築いた親たちは、事業において.一代目に多大な期待をかけ、 彼らを教育することを最も重要なことと考えている。 「中国の富豪は三つのことに忙しい。企業を発展させること、政府とうまく付き合う こと、そして子供の教育だ。若い企業家でさえ子供の教育は仕事の一つ。80%が自分の子を将来自分 の事業を託すことのできる人材に育てたいと考えている。」中国社会科学院公共政策研究センターの陸建華 副主任は多くの富豪たちとの交流を通じて彼らのほとんどが子弟を英国のケンブリッジ、米国のハーバード やエール大学など海外の一流大学へ行かせていることに気が付いた。 陸建華によれば99%の「富二代」が名門校に入学しているという。一方で名門大学に学ぶ中産階級二代目 は50%に満たない。多くの一般庶民は努力の末、可能性はせいぜい5%に過ぎない。これにより「富二代」 は知識や技能の面で一歩抜け出し、強い競争力を持つに至っている。教養、見識、役人との付き合い方な ど富二代は親の世代よりも優れている。何よりも彼らはゼロから出発しなくても よいのだ。 「富二代」階級は中国人の財産に対する見方、価値観を根本から揺るがしている。 陸建華によれば、中国では努力に依らず財産を得ることは最近恥ずかしいことでは なくなったということだ。財産の合法的継承は法律に守られている。また「富二代」 たちの豪華な暮らし、賛沢な消費がその他の階級、とりわけ中産階級たちの消費を 刺激するであろうと見られている。 (『新聞週刊』2004年36期2004年9月30日)


犯罪記録を調べて採用

報道に依れば南京の某民問企業は職員の採用にあたって必ず侯補者の 犯罪記録を調べており、採用希望者は必ず「犯罪記録調査費」として30十元払わ なければならないという。 犯罪記録は公安部門が保管する重要資料で、公安部門はプライバシー保護責任があり、 軽々しく公開してはいけないものだ。 公民の犯罪記録を調査できるのは軍事、行政機関が職務上、秘密保持上必要な場合に おいて、採用時調査してよいと関係法規に明確に規定されている。一般企業は通常は 調査する必要もなく、調査も許されない。特段の理由がある場合のみ、企業人事部の 公印文書を持って対象者の本籍地派出所で閲覧することができる。 南京の企業が犯罪記録調査を一律に行っているというのであれば、全ての採用侯補者 を犯罪者として疑っているのと同じ、人格を侮辱しているではないか。 (『工人日報』2004年10月8日)


都市と農村の栄養事情

2002年全国栄養と健康総合調査により明らかになったことだ。我国都市住民は 肉類と油脂の消費が過多で、穀物の消費は過小である。子供の栄養不良は農村地帯 で依然としてひどい。一方都市の青年の体重超過率は30%、肥満率は12.3%、 子供の肥満率は8.1%にまで伸び、今後も肥満患者の増加は比較的大幅な伸びを 見せると予測される。 我国の都市と農村の3歳から18歳の青少年の、各年齢別の身長を1992年と 比較すると3.3ミリメートル伸びている。しかし農村の成人男性の平均は全体平均より 4.9ミリ、女性は4.2ミリ低い。農村地帯の5歳以下の子供の発育遅れの率は 17.3%、低体重率は9.3%。貧困の農村はもっとひどい。 国民の食事の質は明らかに向上しているが、同時に栄養不足と栄養バランスの悪さ という問題に直面している。鉄、カルシウム、ビタミンAといった微量栄養素の欠乏 は都市、農村共普遍的に存在する問題である。 (『新華毎日電訊』2004年10月13日)


外国企業組合排斥の真実

10月20日の『法制日報』紙で「一部の多国籍企業は我が国の法律を無視して公然 と労働組合の設立を制止している。」として、ウォールマート、コダック、デル、サムスン 電子が実名で報道された。 このうちの某企業のPR責任者は記者に「報道の理由がわからない」と非公式に 語った。どこも職員の権益を守るという面ではしっかりした企業だと彼女はいう。 例えばウォールマートはアルバイトであっても全ての店員に保険をかけている。 国内の同業者は正社員にすらかけていないというのに、というのだ。 組合は「労働者の意思で設立される」もので、組合を作るかどうかの決定権は労働者にあり、 会社の管理の及ぶところではない、というのがコダックの答えである。 中華全国総工会法律顧問の関懐氏によれば、確かに「工会法」で労働者の意思で設立 される組織とされているが、同時に「上部の労働組合は組合設立の補助、指導をする ために企業に人を派遣でき、如何なる機関、個人もそれを阻害してはいけない」 とあるという。「一部の外国企業のトップは組合を排斥しようという態度であり、 労働者はそれを恐れ組合設立の先頭に立つ人物も現れない。」というのだ。 関氏は、組合が設立されると経営管理に不利だ、コストが増すという、企業の組合に 対する誤ったイメージや、地方政府が企業の誘致に懸命で、労働者の権利を蔑ろにしていると いう要因が背景にあるとみている。 (『南方週末』2004年11月4日)


    


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