中国ウォッチング『善隣』2005年5月号(上松玲子訳)


身近になった臓器移植手術

肺の移植が20万元、肝臓移植が17万、心臓移植は13万、と費用は海外の 四分の一から三分の一だが、三、四年前には手が届かなかった数字だ。それが 今では上海で臓器移植をした人は千人を越え、僅か二、三年で高度医療である 臓器移植が大衆化し、多くの末期患者の命の綱となったことに専門家は驚きを 隠せない。 昨年秋、77歳の老兵が車椅子で復旦大学付属中山医院を訪れ、老いて衰えた 肺と心臓の取り換えを願い出た。彼は若い時、戦争中に毒ガスを吸ってから肺気腫 を患っていた。自分で歩きたいという老兵の強い気持ちは病院側を動かしたが、 77歳という高齢のため、医師は決心がつかない。臓器移植では60歳というのが 一つのボーダーだからだ。結局、執刀医の決断で手術をすることになった。結果、 6時間におよぶ手術は成功し、老兵の望みは叶えられたのである。 (『文匯報』2005年1月31日)


北京首都鋼鉄移転決まる

首都鋼鉄公司一首鋼集団一の移転がようやく決まった。曹妃甸は河北省唐山市の 南の小島で、首都鋼鉄の新居となる。しかし、移転後の首都鋼鉄は果たして首都 鋼鉄と呼べるのか。12万の従業員はどうなるのか。また移転後の広大な工場跡地 はどう利用するのか。移転の是非をめぐって激しい論議がなされた。支持派の 掲げる旗印は「環境保護」で、北京オリンピックも一つの理由となった。一方、 反対派は、北京の発展は首鋼集団全体に支えられてきたと主張した。 製鉄部門は移転するが本部は北京にとどまると首鋼集団の朱継民理事長は言う。 首都の本部は、技術開発や資本運営および経営管理を行うと共に、冷延鋼板や表面 処理鋼板などの先端的加工製造部門や、機械電力設備、マイクロ電子設備製造部門 も本部に置くという。 首鋼は北京の環境汚染の大口の源であった。環境保護部門のデータは、移転により 毎年1万8000トンの総浮遊顆粒物質の減少につながることを示している。これは 汚染も河北に移転するという意味かという問いに対し、朱理事長はこう否定する。 曹妃甸には最新の設備、技術の導入により、工程の省略、エネルギー効率の向上を 実現し、節約型、クリーン型、循環型の環境負荷の低い現代型製鉄工場を建設すると いうのだ。(『中国青年報』2005年3月8日)


食糧生産に意欲わかず

生産原材料の値上がりと食糧価格の低迷から、内蒙古西部の農民は今年の収入増も 期待できず、食糧の生産面積を減らす動きが出ている。 托克托県中灘郷の農民金さんは、「税金を10銭免除してもらっても、化学肥料が 1元値上がりすれば作付けは難しいよ」と語る。碾子湾村支部書記の雷三春氏に よれば、昨年農業税を全て免除し、1人40元もの免税をしたが、それでも化学肥料 の値上がり分にもならなかったという。その上物価の上昇で農家の支出も増えている。 昨年は石炭が1トン120元だったが、今年は200元にもなり、他の生活用品も 値上がりしている。農家の生活は確実に昨年、一昨年に比べ悪くなっているという。 現金収入が増加している世帯は畜産に力を入れている世帯か、他省に出稼ぎに行って いる世帯である。鄂尓斯市東勝区罕台鎮の農民楊さんは、何十年と食糧を作ってきたが 豊かになった実感はなかったが、2003年に豚と羊の飼育を始めたところ、経費を 差し引いても2万元ほどの収入があったという。彼の80ムー(約5.3ヘクタール) の土地では、食糧ではなく、主に自家用の餌となる牧草を生産して いるという。(『新華毎日電訊』2005年3月20日)


不足するバス運転士

上海市の公共交通公司はどこも運転士不足に悩んでいる。多くの運転士が やむなく『労働法』で規定する週四十時問の標準を大幅に超えて勤務している。 上海のタクシー運転士の平均月収は3500元ほどだが、バスの運転士は その半分ほどで、このことが多くの人の職離れを招いている。昨年の一月 から七月の間にバス運転士養成訓練を受けた人は2046名で、一方運転士 を辞めた人は3346であった。 バス運転士の7割は中学卒業の学歴だが、現在のバスは電子設備やGPSなども 備えており、中学卒業では対応できない。しかし、人もまた集まらない。浦東 地区の冠忠バスが300名の優秀な人材を採用したが、養成訓練を終えて1月後 には多くがタクシー運転手に転職してしまった。 上海市公共交通業協会は、この問題が解決されないと数年後には運転士不足のため に運行数が減り、バスがなかなか来ない、という状況になるだろうと断言している。 (『工人日報』2005年3月29日)


働かない若者たち

ある程度の学歴を持つ若い、「新失業者群」が「傍老族」(年長者に依存する人たち) の中心となっている。中年の失業者とは異なり、彼らには職を失ったというよりも 「職に就かない」という表現がふさわしい。 2003年に高校を卒業した毛君、幾つかの職に就いたが、どれも長続きせず、 失業して一年になるが、両親が毎朝出勤前に置いていく20元で生活し、マージャン で時間を潰す。豊かではないが、楽だし、のんびりしていていいと感じている。 「くたくたになるまで働いても数百元しかもらえないからというのが二24歳の張 さんの家にいる理由だ。毎日インターネットカフェでゲームをして過ごす。両親が 二度探してきた仕事も、辛いからと辞めてしまった。「選り好みをする実力もないの に、仕事が空から降って来るわけもない」と親は気をもむが、わが子だから仕方が ない、と少ない給与の中から数百元を渡している。 この数年、学歴も技能も低い若者の就職が難しくなっている。その多くが80年代 に生まれた一人っ子で甘やかされて育った。給与の良い職には就けず、低い職には 就きたくない。かといって苦労するのは嫌なので、家で親に扶養されているという のだ。親は経済的に負担を強いられるだけでなく、精神的にも追い詰められている。 「外に出て仲間と悪いことをしなければそれでいい」と言いながら、心中不安を 抱えている。 両親と三人で父母の年金月1500元で、50平米の旧い部屋に暮らす金さんは、 金がなければ親に貰う方が、ホテルの従業員よりましだと思っている。技術学校を 卒業してホテルに就職したが、冬、手に霜焼けができて辞めた。半年家に居て、親戚 がまたホテル従業員の仕事を紹介してくれたが、一日で辞めた。「お客にへりくだり、 馬鹿にされる」という。ネット代、携帯電話代、友人とのカードゲームに月700元 使うという。生活に困った父が、ビル管理の電気工の仕事を探してきたが、「そんな 危険な仕事をさせるのか」と怒鳴られ、老いた父が、生活のためにその「危険な仕事」 に就く事になった。 平日の昼間からカードゲームに興じるグループやネットカフェでゲームをしている 若者をよく見るが、その多くが働かない「傍老族」だと地域の関係者はいう。 学歴の低い若者たちが就ける職業は「青春飯」(若いことが武器となる職業を指す)と いわれるサービス業が主であり、親のすねをかじって年齢を重ねている問に就業の 機会は益々失われていくのである。 (『中国青年報』2005年3月31日)


    


 国際善隣学院 中国問題研究所