大都会の貧困家庭
北京大学蔚園の察さんは74歳で髪は真っ白である。
夫はかってソ連で心理学を学び1960年に北京大学心理学部に
配属された。察さんも実家から北京に移り住み、万泉河小学校で
教師となった。二人の娘がいるが、今年41歳の長女は17歳の時
から精神分裂病を患っている。
1988年に夫が糖尿病で逝き、察さんもほどなく定年退職して、
退職金で家計を支えてきた。しかし、長女の病状が悪い時は数千から
一万元もの入院費がかかる。次女もまだ学生だ。夫の友人の紹介で
北京大学付属小学校の臨時教員をして月180元もらっている。
寝たきりになった大学教授の妻の世話をして一晩4元、原稿の清書
を手伝って百字30銭稼いでいる。
2000年に北京市が「低保」(都市住民最低生活保障)制度を施行
した後は生活保護を受けている。お金がない老人は日々倹約に努める。
梨は1斤(500グラム)1元に下がるまで買わない。春には野草を
とって食べている。私が元気でいなければ子供の面倒を見る人が
いなくなる、と察さん。
「ガスや電気のある家に娘一人になったら危なくてしょうがいない。
娘と一緒に逝くことができたらいいが」と。
北京大学燕園の民政事務をする女性の勧めで趙さんを訪ねた。趙さん
は先代が残してくれた二間の家でやはり先代の残した古めかしい衣装箱
や箪笥に囲まれている。
1997年に趙さんの夫は勤め先の業績不振のため退職した。直後友人
に貸した大金を返してもらえず、夫は気がおかしくなってしまった。
趙さんは農民戸籍で仕事がない。この二年輪タクで子供を送り迎えする
仕事をしている。不安定な仕事なので地区事務所が月150元を保証
してくれる。
精神病の夫は月290元、14歳の息子は月359元の生活保障を受け
ている。電話をすると親戚はこちらを気づかって向こうからかけてくれる、
と趙さん。息子のこととなると「聞き分けの良い子で、学校で外に遊び
にいくと他の子は数十元から百元も使うが家の子は十元の小遣いすら要ら
ないという」と笑顔で話す。「夫はもう何年も病院に行っていません。
この種の病気の診療費は高いですから」。
東華門に住む張さんを訪ねた。十平方メートルほどの小さい部屋、入り口
には小麦粉の袋で作ったのれんが掛かる。部屋には大小のベッドに粗末な
布団、シミだらけの壁に毛筆で書かれた詩や様々な大きさの「冤」の文字
が並ぶ。
2003年2月に元の家を強制的に立ち退きさせられた。それ以来家族
三人流浪の末、東華門街道事務所がこの住処を用意してくれた。張さんも
夫も退職しており、二人の退職金を合せても千元ほどにしかならない。
「今は夫が輪タクで稼いでくるお金が頼りです。野菜はジャガイモや白菜
など安いものしか買いません。病気になっても病院にもかかれませんよ」と
張さんは話す。
(『中国経済時報』2005年6月29日)
消え逝く古代遺跡
青海省柴達木(チャイダム)盆地は今でこそ鳥も飛ばず、草も生えない荘々
たるゴビ砂漢だが、数千年前は水草が生い茂り、牧畜や農業で栄えた場所で、
多くの文化遺跡を遺し、歴史の宝庫と呼ぶに相応しい。夏日哈から巴隆までの
二百キロの地域に千ケ所を上回る吐蕃の古墳群が存在する。
二十世紀八○年代から犯罪者と国内外の古美術商がこれらの遺跡にあさましい
目を向けはじめた。古墳とみるや掘り返す。海抜4800メートルの古墳さえ
彼等の略奪から逃れることができなかった。盗掘の手段はかつてのシャベルに
よる手作業から爆薬やブルーザーを使うようになった。数人での盗掘が今では
集団化し、盗掘専業戸や専業村まで現れた。今までにチャイダム古墳群のうち
千以上が盗掘に遭った。海西蒙古族自治州の州都、徳令哈市では四ヶ月のうち
に90の古墳が盗掘されたという。
1996年から都蘭県文化財保護管理所と文化財公安派出所は三千件
以上の文化財を押収したが、二百件以上が国家の一級から三級の文化財
に指定されるものであるという。
(『工人日報』2005年7月20日)
八時間労働制は有名無実
江蘇省北部の塩城出身の陳さんは南部の某市で、1日12時問、生産
ラインに立つ。朝7時に出勤し、夜9時に退勤、食事休憩2時問。週末
は一日休日出勤して、月給は六百数元だ。一日8時間労働制を知っている
か訊ねると、仕事さえあれば8時間なんてどうでもいい、と答えた。
江蘇省南部の労働集約型の加工業では1日10時間の労働は当たり前で、
14時間というのもあるが、工員たちは不満の表情も見せない。
江蘇省総工会(労働組合)の張海涛氏によれば、労働法では企業が超過勤務
をさせるには、工会の同意と労働者本人の希望が必須条件だと規定されて
いるが、多くの企業が守っていないという。
29歳の朱華さんは南京の某保険会社の内勤職員で育成訓練部のマネージャー
である。月収は八千元だが、この4年問休暇を取っていない。26歳の周さんは
残業の度に「これで将来の150平米の自宅のレンガを一つ積んだんだ。」と
自分に言い聞かせる。
自由業の者やホワイトカラーの残業は金のために自由を犠牲にしていると
いえる。若いうちに健康と時間を金に換え、年老いたら金で健康と時間を
買うという考えは次第に黙認されるようになったかのようだ。しかし心理学者
の杜衛東教授は言う。「家族団らんの時間はお金では買えないし、働きすぎで
壊した体は元に戻らない。」
南京の朱浩さん夫婦は懸命に働くあまり、一緒に過ごす時間が少なくなり、
気持ちも離れてしまった。「よりよい生活のために稼いでいるつもりが、
稼ぐために生活が失われている。」と朱さん。
現代の人々は益々余裕がなくなっている。職場では「赤い靴」を履いて休み無く
踊り続けなければならないという雰囲気が充満している、と南京大学の劉保軍
研究生。超過勤務の現状は法律の条文だけで解決される問題ではない。
(『市場報』5月13日)
半数は戸籍のない市民
先日北京市「第11期5カ年計画公聴会」が初めて開かれ人口問題が焦点となった。
最近深洲市で人口抑制政策が打ち出され、論議を呼んだばかりだ。原則論としては
多くの人が移動の自由、平等な権利という政治理念に賛成している。しかし都市と
農村を分割する戸籍制度は二つの利益集団の深刻な対立を産み出してしまった。
もしも両者の壁を急に取り払ってしまったら(単に戸籍制度だけでなく)、大混乱に
なることは問違いない。例えば農民も都市市民と同じように老齢年金や退職金が
受け取れるとしたら、都市政府の財政はたちまち破たんしてしまうだろう。また
ある提案に基づいて都市に居住を希望する農民に対し安価な賃貸住宅を提供し
たとすると大変なことになるだろう。部分的にではあるが深洲市の住宅によって
人口を管理するというやり方には賛成できる。
中国農民の兼業化は長期的に存在する経済現象である。近郊農民の兼業化は推進
するが遠方からの流動人口による兼業は歓迎しない。
農民を都市に住まわせ、市民にするのであれば、近郊の農民に限るべきである。
一つの都市に戸籍のない人々が人口の半数以上という状況は異常な状態である。
政府はその財政力と環境が受け入れられる規模に基づいて住宅の供給を拡大し、
適度に非戸籍人口の戸籍人口への転換を図り、都市化の進展に貢献するべきである。
(『新京報』2005年8月8日)

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