中国ウォッチング『善隣』2005年12月号(上松玲子訳)


第二子を望む人たち

政府の一人っ子政策はまだ続いているが、二人以上の出産が都市でも 多くみられるようになった。 「一人じゃ寂しいでしょ、次もほしいだけ産むつもり」という伍冬さん は大学院卒の「投資家」だ。子供が授かるようヨガに励む。二人目を望む 人は彼女のように高学歴の人が多い。結婚よりも仕事を優先し、晩婚では あるが、事業の成功により自由な生活ができる。 河北省の医療機関で働く王さんは二人目出産を控え休職中。三歳半の息子 がいる。「夫も私も今度は女の子が、と思うようになった」という。夫は 個人事業者で事業は好調、王さんが働く必要も無い。 ケイ台の趙さんは沿海都市に海の見える家を買い、妻の戸籍を移した。 人脈を利用して出生許可証を取得。趙さんの第二子は無事誕生した。 「いずれ学校に通うようになるまでに戸籍を戻せばいい」と言う。 現在一部の都市が戸籍制度を緩めたため第二子も合法的身分を手に入れる 機会ができた。私立学校も増え、金があれば教育も受けられるし、家を 何軒も持ち、行政の目を逃れることも簡単だ。 都市では勤務先が政策に違反した職員を除名する或いは罰金を課すなどして 一人っ子政策の監督役を担ってきた。社会の選択の幅が広がり、人の流れも 激しくなった今、職場はそうした機能を失いつつある。 法律違反にならない方法もある。高学歴、高収入の人は外国籍の人との結婚や、 自身が外国籍や長期在留資格を取得することで規制を逃れている。外国滞在中 に出産して子供に外国籍をとらせるというのもよくある方法だ。第二子を望む 傾向は農村の低所得層と都市の高所得層という両極端な人々にみられる。農村 では労働力のため、都市では収入や事業に成功した人が、一人っ子の我が子に 兄弟を与えるためである。 修士や博士など高学歴の人々を対象に中国青年報が行った調査では、八割が 「子供は二人が理想的」と答え、政府の政策が緩和される前に国外等で第二子を もうけようと思っている人が実に四割にものぼった。一部の人の気持ちの中 では、子供の多いことが、高級車や高級住宅と同様に成功のシンボルと捉えられ ていると社会学者は指摘している。 『燕趙都市報』2005年9月26日)


弱者の中の弱者女性農民工

寧夏自治区の市中心部のレストランで働く農民工の女性、朝八時半から夜十一時 まで休日も無く働いて月給は300元。契約にはあったボーナスも貰ったことはない。 寧夏総工会(労働組合総会)の調べでは週に二日休める農民工はいない。 一日の労働時間は十時問、残業代ももらえない。銀川市の商都夜市小飯館で働く女性達。 雇主との契約は口約束のみ、保証金まで積まされる。食事と宿を提供され、月給は350元、 休みは無い。一日14時間も働かされても残業代やボーナスもないばかりか店の業績が不振 だと賃金は勝手に削られる。実に四45%の女性農民工が給与の不払いを経験している。 寧夏自治区では彼女らの月給は300元前後、最低では180元という。節約の ために数人で間借りをするか、親戚知人の家に同居。外食などしたことがない。 農民工向けに売られているトイレットペーパーは一つ1元の安物だ。暇な時間は 故郷への電話や同郷者とのおしゃべり、街を歩くといったところ。帰るつもりも ないが、帰ることもできない。都市には彼女たちを癒すものはない。 寧夏で養老保険に加入している農民工はわずか9%、私企業ではゼロに近い。 まして育児保険など論外である。出産にあたっては仕事を辞めざるを得ず、経済的 な保障は何もない。企業から保健用品の支給もない。粉塵など汚染のひどい企業でも マスクの支給すらないまま劣悪な環境で働いている。 (『新華毎日電訊』2005年10月31日)


個人所得税改革の課題

今年10月27日、第10回全国人民代表大会常務委員会第18次会議で 個人所得税法改正案が可決された。(最低)課税対象が800元から1600元に 引き上げられ、低所得者の負担を軽減する一方で自己申告納税の義務化など課題 となる高額所得者への課税を強化する内容で、来年1月1日より実施される。 大学卒業間もない李芳さんは某国有企業の職員。月給は2500元で、月々の 所得税は105元、収入の4.2%だ。2004年の個人所得税収総額は1737億元 で、その54%給与所得者の納める税金だ。税率は5%から45%の9段階の累進課税。 データによると税率5%および10%の人が全納税者数の半数で、税率15%の人数は 全体の21%に過ぎないが、金額は37.2%と9段階で最も多い。この三つのランク に入る月給6000元以下の給与所得者が我国の個人所得税の主力であり、李芳さんも その一人だ。 一方、郭さんはある会社の株主。給与はゼロ、配当わずかなので所得税を払わない。 だが車の購入や外食、旅行も全て接待費等の名目で会社が払う。有名病院で主治医 を務める林先生は平均年収20万元だが、課税対象は5万元足らずの給与所得のみ。 謝礼や薬品リベートや非常勤外来医のアルバイト代は現金でも受け取るからだ。 中国社会科学院「2005年社会青書」によれば貧富の差を表す国際的指標ジニ係数が 中国ではすでに警戒水準とされる0.4を超え0・465に達している。こうした状況下、 高額所得者への課税強化を求める世論の声は益々高まっている。しかし、給与外所得以外に、 中国の富豪の収入の多くは「灰色」から「黒」であり、全く税務署の手の届くところでは ないという指摘もある。 今年8月、国家税務総局は高所得業種および個人の範囲を特定し、高所得群とされた個人 企業主、投資家、建築請負業者、芸能人、弁護士、会計士、税理士、大学講師等に対し、 課税管理制度と方法を制定するなど、監督管理に着手し始めた。各級の税務機関も毎年 経済情勢に基づき重点的に管理を実施し、2003年から今年上半期までに660万件 の重点ファイルを作り、定期的な収入報告を求める等追跡管理している。しかし、個人 所得税の流失は深刻だ。所得税による収入分配の調整作用が十分に機能していないのは、 富の一次分配と課税管理が連携できる環境が整っていないからだと専門家は指摘する。 多元的で表に出ない収入の存在、例えば現金取引、実名でない銀行預金、個人の信用 情報体系の不備、情報提供に関わる強制力のある法律がない等に加え、収入の分割により 低税率を可能にする分類税制、不明確な納税者の法律責任等である。 高額所得者の自己申告制は2002年に制度を導入した浙江省の例をみても浸透は 先の話だと見られている。東西地域間や階級間の収入の開きが大きく、全国一律に 高額収入ラインを決められない。また個人の信用情報体制が不備な上に納税意識が低く、 他国のような懲罰制度がない我国では自己申告に頼るのは現実的には難しい。 そこで高額所得者の管理という難題に取り組む方法としては専門家の意見と税務機関の 方向性は一致している。世帯ごとの正確な納税者名簿を整備し、収入と納税記録を把握、 動態管理する。奨励や懲戒に力を入れる。銀行、税関、公安、外国為替部門等との連携を強め、 現金決済を減らす。給与体系を見直し、手当てや福利厚生費等を一本化するというものだ。 納税は高額所得者にという社会観念を排除し、低所得者も低率でも納税するべきだし、 高額所得者を脱税に走らせるような最高45%という税率は見直すべきだ。しかし貧富の 格差是正という大事業は個人所得税改正のみで成し遂げられない。特に不正な手段や経路で 富が少数の人に流れる「黒色収入」対策には経済政策や法律的手段に委ねるところが大きい。 (『光明日報』2005年11月9日)


    


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