中国ウォッチング『善隣』2006年10月号(上松玲子訳)


視察旅行に疑問

徐さんは東北のある省都郊外にある村の党支部書記だ。今年3月27日から 5月12日まで市は村の書記たちを集め、新農村建設調査のため一回に20人、 計6回韓国へ研修団を派遣した。6月1日徐さんは初めて異国に足を踏み 入れた。どの参加者も帰国後は韓国での経験を必ず実らせるという意気込み だったが、結局「知らないことばかりで驚いたが、100万元も使って何も身に つかなかった。」という。参加者は皆「いい経験だったが、自分たちには学び 切れない。」という感想だ。 今回の視察団は全市で120名が参加、一人当たり1万余元、計百数十万元の 経費は市の財政から支出された。徐さんはこのような費用をかける値打ちは なかったという。長年村の予算を預かってきた徐さんからすれば、その金額は 小学校10校の改造、30ヶ所の文化室の建設、100人の貧困世帯学生の学費補助 に相当すると知っている。徐さんの村は灌漑条件が悪く、予てより貯水池建設 の要望がある。建設には二、三十万元かかるが、今回の研修費用を村にくれた ならどんなに役に立ったか。 徐さんによれば、今回韓国で訪れた観光地の幾つかで中国の県や郷からの視察団 に出会ったという。中には「歓迎新農村建設調査団」と中国の簡体字で書かれた 横断幕を掲げた村もあり、どうやら新農村建設視察は韓国の観光業の一項目に なっているらしい。仮りに全国68万の行政村の十分の一の党支部書記が韓国 へ研修旅行し1人1万元の公費を使ったら7億元と、途方もない金額になる。 「国内でも、華西村(江蘇省)や南街村(河南省)などは新農村建設のよいモデル であり、わざわざ外国に赴かなくても。」と徐さん。 「印刷物だってビデオだって手に入る時代なのだから、専門家に資料を作ってもらい、 テレビ局に特集ルポを製作してもらえば、幾らもかからない。農民が資料を読んで テレビを見れば、数多くの観光旅行団よりもはるかに効果は高いはずだ。」 (『経済参考報』2006年8月9日)


穀物貯蔵の無駄

国家食糧局が行ったサンプル調査の結果、各農家で保管される食糧が毎年1500万 トンから2000万トン無駄になっていることが明らかになった。これは食糧の大生産地 である山東省の小麦の年間収穫量に匹敵する。昨年山東省の小麦生産高は1800万 トンであった。 現在わが国の農村では2億4000万世帯の農家が各自食糧を保管している。その量は 全国生産量の60%以上だ。調査の結果、その保管方法はほとんどが旧来の方法 で、鼠や虫、カビなどの害が多く、対策がほとんどなされぬまま悪条件の中保管され、 生産後の損失が大きいという問題を抱えている。 食糧の主要生産地では食糧の保管に、布袋、麻袋、木箱、陶器製の甕、囲席(筵を 巻いて作った囲い)などが使われている。これらは保存性に優れず、鼠害、虫害、 カビの問題は深刻である。さらに、食糧保存についてのサービス体制の不備、農民の 科学的知識の乏しさなどが、巨大な損失の要因となっている。 江西省の調査では、一般的に農家一世帯あたりで2トンから3トンの食糧を、6ヶ月 ほど貯蔵しているが、貯蔵の課程で平均4%から5%の食糧が無駄になっているという。 収穫期の3%から4%の損失を合わせると、収穫後の損失は7%から9%にもなる。 江西省全省で農家に貯蔵される九百数十万トンの7%、63万トンが毎年無駄に なっていることになる。金額にして7億5600万トン、全省農村家庭の世帯純収入 の3.5%にもなる。 (『経済参考報』2006年8月3日)


警察官のノルマ制を廃止

全国の公安機関で長年踏襲されてきた「指標制」(ノルマ制)は北京では過去の ものとなった。それまでは交通警察には罰金のノルマが、民警には泥棒を捕まえる ノルマが決められていた。 「指標制」には以前から市民の不満が寄せられていた。これに取って代わったのが 「犯罪定数」である。刑事治安事件、重大刑事犯罪、多発性経済犯罪などの三大分類 と十四項目がある。 北京全市のそれぞれの地域別にこれらの定数で治安状況が評価される。これによって 何処の地域にどのような犯罪が多く、警察の任務が行き届いているかどうかわかると いうものだ。 これは犯罪の種類だけをみる制度から、発生数をみる制度への進歩だといえる。既に 首都公安部の各領域でこの体制が行き渡りつつあり、この制度によって、公安局は 治安現状を把握して迅速に対応できるというものだ。安全なオリンピックを目指して の措置であるという。 (『新京報』2006年7月31日)


飲み水の安全を重視

「飲用水の安全と健康に関するセミナー」が北京で開かれた。専門家は飲用水の 水質悪化の主要原因は水源の水質汚染の深刻化にあり、とりわけ農薬や殺虫剤、合成 洗剤、重金属、各種有機化合物、無機化合物および有害物質などによる汚染が深刻だと 認識している。 中国疾病予防抑制センター水質安全監督研究室の鄂学礼主任によれば「現在我国の 浄水場の90%が前世紀初期の方法で浄水しており、物理的汚染と微生物汚染について は処理するが、農薬、殺虫剤などの有害化学物質については処理していない。」という。 水汚染の防止は複雑で簡単に解決できない。専門家は国、企業、社会、家庭が共同で、 健康で安全な飲料水が行き渡るよう取り組むことを切望している。 (『光明日報』2006年8月7日)


民族歌謡の危機

中央テレビ局の青年歌手テレビ大賞では、民族歌唱部門の歌手たちが多くの民族歌謡 作品を歌った。 しかし、一般の人が歌えるような民族歌謡がほとんどない。歌い方も作品も難度の高い、 技巧を凝らした、音域の高い「三高」傾向が明らかである。昨今の民族歌唱法は中国 でも西洋でもない音楽ジャンルに分類される。 音楽学院には民族声楽科があるが、蒋大為氏が言うように「以前はまず千曲もの民族 歌謡を覚えることから始めたが、今はそうではない。 コンテストで難度や技巧、高音が高得点に繋がることから、所謂科学的発声方法を追求 することにばかりに重点を置いて教えるため、若手歌手は小曲に興味を持たない。」と いうのが現状だ。 民族歌手は素晴らしい声をもっているが、そのステージは観衆から遥かに遠い。一部の 審査員も発声練習のような現象に不満を述べていたし、著名な作詞家の付林氏も 「昨今の大学出の民族歌謡歌手は美声と技巧ばかりを追及しており、民族音楽の 味わいを軽視しているが、これは間違いだ。」と述べている。 コンテストで歌われる曲は、歌手が実力を発揮するべくスケールが大きく複雑な歌が いいのだろうが、人の心に触れる歌はもっと高い境地にあるのではないか。 コンテストでよく歌われる『断橋遺夢』などは専門的には非の打ち所がなく、声楽 教材には最適だが聴衆は何度聴いても最初の三文字以外はとても歌えない。 「最初を聞いたらチャンネルを変えて、歌が終わる頃また戻すよ」というネットの 書き込みは、観衆がこうした難解な民族歌曲から離れていることの表れだ。 「現代の創作は、観衆に敬遠されるほど芸術的レベルが高いと証明しているかのようだ。 創作の方向性はいずれ見失われるだろう」という意見もある。 (『新民晩報』2006年8月4日)


    


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