中国ウォッチング『善隣』2007年11月号(上松玲子訳)


大都会の孤独

今年55歳の黄さんは故郷ではよい仕事に恵まれ、退職後は悠々白適な生活 をしていた。しかし、今彼女は北京で時給20元の清掃員をしている。 二年前、娘が北京のある大学の大学院生になったのをきっかけに、黄さんと 夫は北京での生活を始めた。「二人の退職年金を合わせても1カ月千元と少し。 娘が卒業したら住宅購入の資金も援助してあげたい。のんびりしていられ ません。」 朝陽区双橋の団地で散歩中の王さん夫婦に出会った。66歳の王さんは 朗らかな人だ。妻の劉さんは数年前から半身不随となって車椅子の生活だ。 「今年3月に山東省から来て、娘と同居しているんです。」と慣れない様子。 山東省の故郷では仲間と将棋や会話を楽しんだものだが、北京では娘の外に 知る人もない。仕事が忙しい娘は家で両親の相手をしている暇もない。身体が 不自由な劉さんはより適応が難しいようだ。故郷では親戚や隣近所や友人が 訪ねてきて話し相手になってくれた。外出はできなくても街の出来事は よくわかる。だが北京では誰一人として知り合いがなく、辛い思いをして いる。 王さん夫婦の悩みは他にもある。医療保険だ。わが国(中国)の医療保険は 地域ごとであり、病院も指定されていることが多い。劉さんの医療保険は 山東省では使えるが、北京で病院にかかれば全額自己負担となる。公園の 入園料やバス料金の免除など老人向けの福祉サービスは戸籍が現地にある人 でないと受けられない。  中国人民大学人口と発展研究センターの孟向京は地方から北京に居を移す老人 のほとんどが子供と住むことを目的としており、彼らの抱える問題は経済上の 問題よりも心理上の問題の方が多いと分析している。地域の行政単位(社区、 街道)は外来老人問題に的を絞った活動を行い、彼らが新しい環境に溶け込める ように力を貸している。 (『北京農報』2007年9月25日)


農民とインターネット

国家発展改革委員会高度技術産業司のデータによると、今年上半期現在、わが 国の農村のインターネットユーザーは3,741万人に達しているという。 農村が情報から取り残されていた状態が現在急速に変わりつつあることを示す 数字である。その主流は若い農民たちと、農村から出稼ぎに出ている労働者 たちである。 喜ばしいのは農村の特色に焦点を絞ったインターネット利用が厚みを増して いることだ。四川省では、中国聯通が開発した「天府農業信息ネット」は郷や 鎮に情報サービスステーションを設け、地域の専門スタッフが地域の実情に 合わせて農業の専門情報を分類整理し、二ーズに応じて農民の固定電話、 携帯電話、PCに発信するサービスを行っている。農民自身も農業生産に 関する惰報を地域スタッフを通じてネットに発信することができる。情報の 活発化により、「脱貧困」は急速に推進された。 より多くの農民が情報化によって利益を得ることが、わが国の情報化の発展の 重要な目的である、と中国社会科学院情報化研究センターの劉満強副主任は 指摘する。 多くの農民がインターネット杜会に参入したことで、農民や農村の情報化の道 を多方面に探ることこそ、農村を豊かにする新しい道を開くことだと言える。 関係機関および企業は、農村や農民の実情を理解した上で、農民のインター ネットに対する知識の普及や幅広い利用を促し、農村に合った情報サービスを 開発し、伝統的な農村の経営販売方式を変えていくべきである。それができな ければ農村と都市の間のデジタルギャップを埋めることはできないであろう。 (『新華毎日電訊』2007年9月27日)


人口受精に関する倫理問題

「精子を提供したらどうなるか知っていたか?」と裁判官に問われ、張強は「知って いた。だが、私は種子を提供しただけで何の責任もない。」と答えた。40歳を 過ぎた張強はすでに結婚して子供もいながら、20歳も年下の小紅と同棲して 5年になる。小紅は4度も流産したため正常な妊娠は望めない。医者に薦められた 2人は2005年6月に偽造した結婚証書を使い湖北省婦幼保健院で人工受精に 成功、小紅は翌年女の子を産んだ。小紅は出産によって張強を繋ぎ止めるつもり だったが、逆効果だった。張強は「協力しなければ職場に行って騒ぐ、奥さんに 会いに行くと脅されて」人工受精に応じたという。小紅は絶望して彼を訴えた。 親子鑑定の証明書は父子関係を証明している。 1981年わが国で初めて精子バンクとして湖南中信湘雅人類精子バンクが設立 された。劉テイ(注:「女」+「亭」)は昨年から精子提供を待っているが、まだ 順番は来ない。そんな折、夫の親戚が精子提供を望んだ。生まれた子は夫の家の 血筋になると、彼女は医師に相談した。「親族内部での第三者精子提供は絶対に 認められない」と華中科学技術大学同済医院生殖センターの朱桂金教授は言う。 精子バンクからの提供を受けることで、夫婦間の感情や、子供の心身の健康、 家庭の平穏を害することがないようにできるのだという。 特殊な例もある。長年不妊に悩む広東省の王霞さん30歳は、夫との子を体外 受精した。しかし体内に戻す前に夫が交通事故死をした。翌月、本人が望んだにも 拘らず病院に体内に戻すことを拒否された。「一人の親の家庭に生まれることが 健康な生育に不利になることを考慮して」というのだ。 数年前、精子バンクの管理の杜撰さが明らかになった。「いつでも建設現場に 行って、提供者を勧誘してきた」という。ひどいのは、著名人精子バンクや博士 精子バンクといって人を騙すのだという。中国にはまだ中央の精子バンクがない。 一人の提供者が他のバンクに提供することも可能だ。もし一人が多数のバンクに 提供したのなら、将来近親結婚もありえるという問題も隠されている。 (『南方週末』2007年1232期10月4日)


大学生の消費実態

河北経貿大学は大学生消費調査報告を発表した。大学一年生の月消費支出額は 両極化しており、その開きが最も大きい。月額350元以下が最も多く、その ほとんどが農村出身の学生。800元から1,200元、および1,200元以上 というのは都市出身の学生。二年生、三年生の消費は比較的高く、四年生は中程度 と、同大学経済管理学院の教師、申静先生。 河北省の都市部の最低賃金は月480元であるが、調査の対象となった学生の消費額 はこれに近い、あるいはこれを超えるレベルである。消費項目の中でも「恋愛消費」 が一部の学生の中では大きな割合を占める。学習に関わる消費は他の項目に比べ極端 に少ない。大学二年生の例だが、月の娯楽費が100元以上である学生が21%で あるのに対し、学習関係の支出が100元以上の学生は3%で、大多数の学生の学習 関係の支出は30元以下である。 調査によれば90%以上の学生が自分の誕生日には人を食事に招くという。学生幹部 も優秀な奨学生を招くという。半数近くがPCを持つが、PCは学習のためという のはわずか10%という。現代の学生は社会の好ましからざる風潮に影響されて おり、勤勉で倹約することを貧乏くさいと見なし、浪費を気前がよいと、賛沢は 高雅であると見なす。こうした気持ちが月日の経つうちに間違った消費行動につな がっていくと、申静先生は語る。それ故、学校での消費教育、とりわけ新入生に 対する教育を強化するには一刻の猶予も許されない。 (『新華毎日電訊』2007年9月15日)


    


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