中国ウォッチング『善隣』2008年6月号(上松玲子訳)


カード大躍進に潜む危険

先頃、上海銀行監督局は各商業銀行に対し、信用カードの与信管理を徹底し、一人の 個人に多くの銀行が信用付与することにより、個人の信用限度が引き上げられる危険 を回避するよう要請した。データによれば2003年には信用カードは全国で300万 枚だったのが、2007年度中には4,300万枚に膨れ上がった。この調子でいくと 今年は総数で1億5,000万枚を越えるであろう。上海銀行監督局の調査によればカード の34%が多重与信であるという。年会費や遅延利息、使い過ぎなどカードに潜む 危険は多い。 70年代に中国に登場した信用カードは初め普及しなかったが、今や銀行間の市場 獲得競争になり、一挙に普及が加速した。普通銀行が発行する信用カードは、使用 額が年間1万元以下でコスト割れ、さらに数億元にのぼる初期投資を考えると、 国外でもカード会社が黒字になるのは運用から3年から5年後、通常発行枚数が 100万枚を超えてから、中国の場合では300万枚を超えないと、黒字にならないと いわれている。つまり今はどの銀行の信用カード部門も大赤字というわけだ。 上海銀行監督局にはカード使用者が返済不能で銀行が資金面でピンチにたっている という情報など多数の苦情が寄せられている。そこで、昨年9月に大学生のカード 発行審査は十分に、と要請したのに続き今回の要請になった。 だが、どの銀行も危険は承知なのに具体的措置はとってない。拘束力もなく、多くの 銀行が戦略上大幅な割引を行っている中で、リスクは益々累積されている。 (『華夏理財』から『文摘報』2008年4月17日)


希薄な教育の平等意識

深川市は金融の経営者としての人材を集めるため、金融企業の経営責任者の子女は 高校受験の際、十点を上乗せするという政策を打ち出したが、あちこちで論議を 呼んでいる。このところ各地方政府が経済発展のため人材を集めるという名目で、 様々な「加算政策」を打ち出している。金もかからず、紙一枚で公共資本を動かす だけ。役人にとって都合よく感じるのだろうが、「教育の平等」という理念はどこに 行ったのだろう。 特定の社会層への優遇政策であっても原則は「余裕を削って、不足を補う」でなけれ ばならない。たとえば、少数民族や軍人の遺族への点数加算は民族政策や軍人遺族へ の配慮である。ある都市が清掃労働者の子女の入学を優遇しても、都市の美容師を 尊重する具体策だと説明できる。だが、金融経営者の子女はすでに恵まれた環境に あるのだから、社会の公共資本を使う説明はつかないだろう。 (『中国工商時報』2008年4月22日)


奨学金を返さないと

上海市楊浦区法院(裁判所)によれば、近頃151名の大学卒業生が中国銀行上海市 楊浦支店から、教育助成貸付金の未返済分と利子を返すよう訴えられたという。 未返済額は6千元から多い者で2万元、総額184万元という。貧しい学生にとって 「雪中送炭」の国家の教育助成貸付金。何故返さない人がいるのだろうか。 青海省出身のある卒業生は1万元が未返済だ。理想の仕事が見つからず、レストラン のアルバイトで月四、五百元の収入しか返済できないのだという。裁判所から返済 要求を受け取り、彼の父親が裁判官に減額や免除はできないかと電話をかけてきた。 また、住所も電話番号も変わり銀行からの督促状が届かない学生もいる。貸付金を 利用する学生の多くが農村出身だが、卒業後も故郷に戻らず、故郷も立ち退きや転居 で住所が不明である場合も多い。また、入隊や出国で連絡がつかない場合もある。 故意に返済しないケースもある。151名のうち、某有名大学を卒業した女性は4年前 に借りた6千元を、卒業後400元を返済したきりだ。銀行の督促にも応じず、態度も 横柄だ。 楊浦区法院民事第二法廷の楊裁判長は、未返済の代償は重い、という。延滞利息を 払い、信用情報に傷がつき、銀行カードや住宅ローンの借り入れ、出国などに影響 する。さらに、訴訟費用を負担しなくてはならない。 法院では単なる契約不履行案としてではなく、個別の実情を調べ対応している。まだ 2ヶ月たたないが、半数以上が返済に応じ、その多くが全額返済しているという。 (『新民晩報』2008年4月23日)


告発者の生命護られず

李国福は安徽省阜陽市の豪華なオフィスビル「白宮」(ホワイトハウスそっくりな 建物)事件の告発者だ。穎泉区共産党委員書記の張治安が違法に耕地を占拠して 「白宮」を建てた等の問題を度々北京に赴いて告発した。昨年8月穎泉区検察院に 身柄を拘束され逮捕された。そして先頃獄中で死亡、検察機関は自殺としたが、 家族は納得していないと4月22日付『中国青年報』は伝えている。 彼の死には謎が多いが、更に謎なのは当の張治安が、別の事件の裁判で10万元の 贈賄行為が認定されたのに未だ白宮の主人のままということだ。多くの事実が語る のは、告発者は権力者の報復を受け易い弱い存在だということだ。 河南省平頂山の幹部、呂浄一は、李長河を告発して殺され、河北省の幹部、郭光允 は当時の省委員会書記の程維高を告発して投獄された。李国福事件でも公的権力に よる数々の公民権の侵害行為が行われた。百歩譲って彼が自殺したとしても、凶悪 な力に押されたのではないか。 1991年に最高検察院が『公民の告発する権利に関する規定』を発布したが、告発 者の報復が繰り返されている。法律が生ぬるいか、適用しにくいか、権力が法に 勝っているかである。告発者が災難に遭い、告発された方が何もなしというのは法治 社会が許さない。李国福の死の謎を前に我々が「今まで通り」にしていては彼が 中国最後の告発者になるだろう。 (『現代快報』2008年4月23日)


上海市公務員給与大改革

1月17日に通達された上海市の公務員の手当に関する実施規則により、様々な名目 で支給され混乱を招いていた手当が、勤務手当と生活手当に統一されることに なった。3月から給与明細も一新され、上海の公務員十余万人はかつてない給与改革 を経験している。 今回の改正はかなり厳しい。政府の税収以外の収入は財政部門が集中して管理し、 手当の支給も財政部門が一律に給与口座に支給する。現金や現物、有価証券などの 支給は一切禁止だ。 一番影響が大きいのは市の直轄機関である公安、税務、財政部門で、県や区の一級 部門も減収になる場合が多い。民主党派の機関等もともとあまり見入りのない部門が もっともよく、30%程度給与が増えるという。青浦区や松江区の科長級幹部は 20%も給与が減った。 職級による手当の差も、同じ部門の局級の幹部と科の事務員の手当の差を最高5対2 と定められた。職級が上の者ほど減少幅は大きく、上海某区の指導者は年収換算 7万元も減額になったという。 1993年に公務員の給与制度が改革された際に、地域の経済力に見合った「分配」 がなされるように「地区手当制度」が定められ、以来各地が定めた手当の種類は 300項目にも上るという。 各部門が競うように財政予算外の資金を得ようとした結果混乱が生じた。公安、 建設、工商、住宅、教育などの部門は様々な行政収入を得て太るばかり。また傘下 の企業体に、庇護の下で暴利をあげさせ、管理費用や請負費用、年末福利費などの 名目で部門の利益に吸い上げるという方法で公務員の見えない収入が生まれていた のだ。(『南方週末』2008年4月28日)


    


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